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マンション共用部の地震保険|教えて!火災保険

マンション共用部における地震保険について

地震によるマンション共用部地災

出典:一般財団法人消防防災科学センター災害写真データベース

マンション共用部には火災保険を掛ける管理組合様がほとんどですが、地震保険は未加入という管理組合様も少なくありません。マンション共用部に地震保険は必要なのか?必要でないのでしょうか?

このページではマンション共用部と地震保険について解説していきたいと思います。

1995年1月に発生した阪神淡路大震災、2011年3月には東日本大震災、2016年4月に熊本地震により、多くの日本全国のマンションが損害を受けました。一方では被害を受けなかったマンションも多くあるようです。これらの震災による公的機関のデータにはマンション被災状況の詳細を見つけることが出来ませんでした。

そこで不動産専門家である(株)東京カンテイ様にデータ転載の承認をいただき、宮城マンション管理士連合会様には「震災とマンション」からの引用の承認をいただきました。その他、東日本大震災によるマンション被災状況なども合わせてご紹介していきます。

東日本大震災によるマンション被災状況

東日本大震災宮城県現地調査について

◆実施日       :2011 年7 ~ 8 月
◆調査対象エリア   :宮城県全域
◆調査対象マンション :1,460 棟
◆調査項目      :
①マンション建物の被災状況(建物状況)
 →「被害無」「軽微」「小破」「中破」「大破」「倒壊」の6 分類で判定
②マンション敷地の被災状況(敷地状況)
 →「被害無」「軽微」「小規模」「中規模」「大規模」の5 分類で判定
③マンション周辺の被災状況(周辺状況)
 → ともに「被害無」「被害有」「不明(地震による被害か判断できず)」の3 分類で判定
◆現地調査主体    :東京カンテイ

免震・制震構造有無による建物被災状況

免震・制震構造によるマンションは東日本大震災のような横揺れの地震には強いが12.1%の免震構造マンションは被害を受けています。データ提供元:(株)東京カンテイ様

宮城県 免震・制震マンションの被災状況
免震制度有無   被害無 軽微 小破 中破 大破 合計
免震 棟数 29       33
シェア(%) 87.9 12.1       100.0
制震 棟数        
シェア(%) 100.0         100.0
なし 棟数 706 527 175 15 1,424
シェア(%) 49.5 37.0 12.3 1.1 0.1 100.0
合計   738 531 175 15 1,460
耐震基準別建物被災状況

新耐震・旧耐震ともに東日本大震災では約50%のマンションに損害があったと言えます。
データ提供元:(株)東京カンテイ様

東日本大震災 宮城県耐震基準別建物被災状況
  被害なし 軽微 小破 中破 大破 合計
新耐震 棟数 630 456 135 12   1,233
シェア(%) 51.1 37.0 10.9 1.0   100.0
旧耐震 棟数 108 75 40 227
シェア(%) 47.7 33.0 17.6 1.3 0.4 100.0
合計 棟数 738 531 175 15 1,460
シェア(%) 50.5 36.4 12.0 1.0 0.1 100.0

地震保険の概要(マンション共用部の地震保険)

地震保険とは

  • 地震保険とは、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失等による損害を補償する保険です。

地震等による損害は火災保険だけでは補償されません。

地震保険の役割

  • 地震により損害を被った場合のマンションの再建・修繕費用は大きなご負担となります。特に新築間もない場合や、大規模修繕後である場合は修繕積立金が不足し、自己負担額が大きくなります。

共用部分の地震保険に加入いただくことで、マンションの再建・修繕資金の一部に充てていただくことができます。

区分所有マンションにおける地震保険の対象

  • 地震保険は、お住まいの「建物」や「家財」にかける保険です。

  • 区分所有マンションの場合、「共用部分(玄関ホール、廊下、外壁など)の地震保険」と「有部分(室内、間仕切り壁など)の地震保険」の2種類があります。

  • 「共用部分」については管理組合様が地震保険に一括で加入し、「専有部分」については各区分所有者が個別に加入するケースが一般的です。

地震保険のご契約金額(保険金額)の設定方法

  • 地震保険は必ず火災保険とセットで契約します(単独では契約できません。)。

  • 共用部分に一括で地震保険に加入する場合、地震保険金額は共用部分の火災保険金額30%~50%の範囲内で設定します。

(例)共用部分の火災保険金額10億円→3億円~5億円の範囲内で設定

  • ただし、区分所有者ごとに共用部分(共有持分)と専有部分あわせて,000万円が限度となります(保険金額には土地代は含みません。)。

地震保険の保険料

  • 地震保険は、お住まいの地域(都道府県)や建物の構造によって決まります。また、建物の免震・耐震性能に応じた割引制度があります。

保険金の支払方法

  • 支払われる保険金は、建物の損害状況により「全損」、「大半損」、「小半損」、「一部損」の4区分()に分かれます。

  • 「全損」は地震保険の保険金額の100%、「大半損」は60%、「小半損」は30%、「一部損」は5%の保険金が支払われます。これは保険金を迅速かつ公正にお支払いするために4区分としているものです。

  • また、地震保険は、法律に基づき国と損害保険会社が共同で運営している保険であり、1回の地震による保険金総支払限度額は12.0兆円(2022年4月現在)となります。

マンション共用部分の地震保険付帯状況①

マンション共用部分における地震保険付帯率は、毎年上昇しているものの、専有部分の付帯率や地震保険全体の付帯率と比較して、かなり低い状況にあります。

付帯率とは火災保険に対する地震保険の付帯率をいいます。

マンション共用部分の地震保険付帯状況 データは日新火災海上保険(株)調べ

マンション共用部分の地震保険付帯状況②(築年別付帯状況)

築年数の浅い物件の付帯率が低い傾向にあります。建築当初は管理組合が組成されていないため、一般的には、総会決議を経ずに管理会社等の方針によって地震保険付帯の有無を決定しています。そのため、付帯率に大きな違いがあります。

共用部分の地震保険付帯率

共用部分の地震保険付帯率 データは日新火災海上保険(株)調べ

マンション共用部分:地震保険に加入しない理由

「保険料が高い」が過半を占めていますが、実際に地震により共用部分に損害が生じた場合の復旧費用の調達方法について話し合われていない可能性があります。

マンション共用部分地震保険に加入しない理由

マンション共用部分地震保険に加入しない理由 データは日新火災海上保険(株)調べ

上記アンケート結果のほか、地震保険付帯率が低い理由としては、

 新築時に付帯されないケースが多く、そのまま現在まで付帯なしとなっている

 ②「マンションは堅牢なので倒壊しない(=地震保険は不要)」と考えている人が多い

 ③新築時に付帯なしの場合、その後に付帯するためには総会決議等の手続きが煩雑

 といったことが想定されます。

東日本大震災での地震保険金受取状況①

「マンション管理支援ネットワークせんだい・みやぎ」が実施した「仙台圏での被災状況・ 復旧状況に関するアンケート調査」によると、震災当時地震保険に加入していた仙台圏所在のマンションのうち9割以上が地震保険金を受け取り、復旧費用等に充てられています。

東日本大震災での地震保険金受取状況

東日本大震災での地震保険金受取状況 データは日新火災海上保険(株)調べ

92.3%のマンションが地震保険金をお受け取り

東日本大震災での地震保険金受取状況②(築年別状況)

建築年が古い物件だけでなく、建築後10年以内のマンションでも9割近くが地震保険金を受け取り、復旧費用等に充てられています。

東日本大震災での地震保険金受取状況

 東日本大震災での地震保険金受取状況 データは日新火災海上保険(株)調べ

地震が発生した場合は、建築年数にかかわらず一定の被害を受けます。

地震保険の損害認定(マンション共用部の地震保険)

  • 共用部分の地震保険の損害認定は、建物全体の「傾斜・沈下」、「柱・はりの損害割合」により判定します。

  • 建物が倒壊しなくても地震保険金は受け取れます。

地震保険の損害認定手順

STEP1

「明らかに全損」どうかを判断

⇒明らかに全損(建物が全焼・全壊・完全埋没・津波等で流失等)の場合はSTEP1で終了

STEP2

「傾斜」「沈下」を判定

⇒倒壊しない場合でも、傾斜や沈下の損害割合を認定

STEP3

損傷の一番大きい階を探す(最上階を除く)その階の柱とはりの損害を確認

⇒損傷の程度に応じて損害割合を認定

STEP4

STEP2とSTEP3の損害割合を合計

<損害割合と支払保険金>

区分

損害割合

支払保険金

全損

50%以上

地震保険金額の全額

大半損(

40%~50%未満

地震保険金額×60%

小半損(

20%~40%未満

地震保険金額×30%

一部損

3%~20%未満

地震保険金額×5%

2017年1月以降保険始期契約より

東日本大震災での地震保険金支払事例(日新火災の事例)①

地震保険の支払事例1

物件概要
  • 構造・階数:鉄筋コンクリート造 11階建

  • 総戸室数:40戸
  • 建築年:平成元年
  • 地震保険金額:1億3,500万円
損害状況・損害認定
  • 損害状況:損傷の最も大きい階(1階)において、柱4本、はり5本にひび割れの損傷が発生

  • 損害認定:一部損と認定

支払い保険金
  • 1億3,500万円(地震保険金額)×5%(一部損)=675万円

東日本大震災での地震保険金支払事例(日新火災の事例)②

地震保険の支払事例2

物件概要
  • 構造・階数:鉄筋コンクリート造 13階建

  • 総戸室数:73戸
  • 建築年:昭和55年
  • 地震保険金額:2億2,115万円
損害状況・損害認定
  • 損害状況:損傷の最も大きい階(1階)において、柱29本にひび割れが発生。一部の柱は部分的なコンクリートの潰れまたは鉄筋が見える程度のひび割れあり。

  • 損害認定:半損と認定

支払い保険金
  • 2億2,115万円(地震保険金額)×50%(半損)()=1億1,057万円

2017年1月1日以降始期契約は、損害割合に応じて「大半損」、「小半損」の区分になります。

地震保険の必要性①(マンション共用部の地震保険)

  • 地震保険は、地震の際のご負担を軽減します。

 

地震保険加入

修復費用の原資

なし

修繕積立金取崩し

区分所有者からの一時金徴収

あり

地震保険の保険金

(修復費用に充当可能、ご負担を軽減)

修繕積立金取崩し

区分所有者からの一時金徴収

マンション地震災害

出典:一般財団法人消防防災科学センター災害写真データベース

  • 宮城県では、東日本大震災時に4分の3の管理組合が地震保険に加入しており、その約9割で保険金を受領
  • 工事費用の資金調達方法の調査でも、修繕積立金と地震保険金が多数を占めた。
  • 地震保険のみで復旧工事を行ったマンションも25%あった。

マンション管理支援ネットワークせんだい・みやぎ「仙台圏での復旧工事に関するアンケート調査」より

地震保険の必要性②

実際、東日本大震災で被害を受けた地震保険の加入のないマンションの中には、修理費負担に関する住民間の合意形成ができず、いつまでも修復できないマンションがありました。

<平成2462日付・朝日新聞朝刊の記事より引用>

→ 仙台市泉区の10階建て分譲マンションの事例

  • 受水槽が壊れ、25階を中心に外壁や廊下に大きなひびが入った
  • 管理組合理事長は、臨時総会で40人ほどの所有者に頭を下げ、「大規模半壊」とされたマンション共用部分の修理費に

    持ち分に応じ65万~85万の負担を求めた。

 『1年も経つのに直さないままだと、下がった資産価値が戻らない。ご協力いただきたい。』 

  • ある所有者は大声で反対した。

8階は、ほとんど被害がない。同じ割合の負担は納得できない。

  • ​ある所有者は嘆く。

普段ほとんど付き合いもないマンション住民がお金でまとまるのは難しい。災害に強い終の棲家と思って買ったのに

 

 

手元資金(修繕積立金等)の備えのためにも、地震保険が必要です。

マンション共用部の地震保険についてまとめ

  • 地震による損害は火災保険では補償されない。
  • マンション共用部分における地震保険の付帯率は低い。
  • マンションでも築年数にかかわらず地震による損害を被る。
  • 地震で被害を受けた場合は、区分所有者から一時金を徴収しなければならない場合があり、建物の復旧にあたり区分所有者間の合意形成が困難となる。

マンション管理組合のみなさまにお願いしたいこと

地震保険へ加入いただくことで、地震の際のご負担を軽減することができます。
実際に加入されるか否かにかかわらず、総会で地震保険または地震の際の復旧費用調達の話し合いの機会がこれまでなかった管理組合様は、一度その機会をもっていただくことも有意義かと思います。

宮城県マンション管理士会様による「震災とマンション」

東日本大震災により東北地方の多くのマンションが損害を受けました。宮城県のマンション管理士会様は被災するマンションを見て地震保険についてどのような見解をされていたのでしょうか?宮城県のマンション管理士会様にご協力お願いをして記事を掲載させていただきました。結論から言いますと地震保険に問題点はあるが、マンション共用部に地震保険は必要であるとの見解のようです。平成23年度の資料になりますので、情報が古い点はご了承ください。

出典:宮城県マンション管理士会「震災とマンション」より

【地震保険の概要】

  • 地震保険は、被災者の『生活の安定』  に寄与することを目的とする保険であるため、保険の対象は 『居住用の建物と家財』 に限定されます。
  • 保険事故は地震・噴火 ・津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による被害です。
  • 通常の損害保険と大きく異なる点は、支払い保険金を実際の被害額ではなく、全損・半損 ・一部損の三段階に区分けして支払う点です。損保各社では地震保険が 『生活の安定』 を目的としている為、なおかつ保険金の支払いをいち早く実現する為に三段階に区分けして支払いをしていると説明しています。
  • 地震保険は独立の保険ではなく、火災保険に付帯する形になっており、主契約である火災保険の保険金額の30% 50%の範囲内で保険金額を設定することになっています。(すでに火災保険を契約している場合、契約期間の中途からでも地震保険に加入できます)火災保険の50%までしか加入できないので全損になって、保険金だけでは住宅の復旧ができずにローンだけが残る場合もあります。
  • 地震損害の巨大さに対応するため、政府が再保険する形になり、保険金の支払いの確実性を担保しています。
  • 保険料は、所在地(都道府県)と建物の構造により異なります。又、築年数や耐震等級などに応じて割引制度があります。
  • 1回の地震について支払われる保険金の総額限度が地震保険法施行例で定められています。( 2008 年 4 月 1日時点では5兆5千億円)この金額は関東大震災クラスの地震が発生しでも全額支払可能と想定されている金額です。 日本損害保険協会は、今回の東日本大震災関連で支払われた地震保険金の総額が、1兆 1531 億円になっていると公表しています。(H23.9. 30 時点)又、損害保険金社の経営が破綻した場合に契約者保護を行う『損害保険契約者保護機構』でも、地震保険は100%補償されることになっています。
 
【管理会社】
ほとんどの管理会社は損害保険代理店になっています。マンション管理組合が地震保険に加入する場合は、代理店である管理会社と損害保険 (地震保険を含む)契約を締結することになります。管理組合と地震保険契約を締結した損害保険代理店である管理会社は地震発生時には、マンションの管理をしていることと併せて、損害保険代理店の立場からもマンション管理組合をサポートすることになります。又、損害保険の契約更改時には管理組合に  とって、適正な保険内容になっているかどうか確認することも損害保険代理店としての重要な仕事であるといえます。
 
【管理組合の考え方】
今回の震災で、管理組合が地震保険に加入していたかどうかで、その後の復旧工事に対する合意形成の進み方が大きく異なっています。
地震保険が半損認定 (地震保険金の50%の支払い)されれば、ほとんどの管理組合では資金の捻出という次元での合意形成は、時聞が掛からずにすすむようです。一部損認定(地震保険金の5%の支払い)の場合、保険金の金額で復旧・修繕工事ができるのであれば問題は少ないのですが、保険金が工事費に満たない場合は、資金面での合意形成が難しくなります。(修繕積立金を取り崩す、借入れをする、一時金の徴収をする、応急修理制度等の公的資金を使う等々)
一部損と半損とでは、金額にすると10 倍の聞きがあります。又、マンションの損傷は主要構造部の損傷でカウン 卜されるので、ラーメン構造のマンションでは柱と梁の損傷しかカウントされません。
今回の震災で 、地震保険で全損と認定された2棟のマンション管理組合があります。いずれも現状のままでは住める状態ではないので、多額の復旧工事費用をかけるよりはと、取り壊しを選択したとのことです。
 
地震保険に加入していない場合は、復旧工事に向けての資金面での合意形成が大変に難しくなります。
旧耐震のマンション等で、なかなか耐震工事まですすまない場合は、まず、地震保険に加入することが、すぐにできる地震対策であるといえます。
 
例 )仙台市青葉区のWマンション 地震保険金額2億6千万円
仙台市の罹災証明は半壊
当初の地震保険の査定は一部損 ( 1 7 %の被害認定)で、保険金は 1.300 万円の支払いとのことであったが、査定の当日に3部屋が留守にしていた為、後日、その3部屋の住人に在宅するよう依頼して、再調査を実施 (主にベランダ側から柱・梁を調査)したところ、半損( 2 1%の被害認定)の査定になり、1億 3 千万円の保険金が管理組合に支払われた。 
修繕工事費の見積もりは約1億円なので、保険金の範囲で工事ができることになった。当初は、資金計画で管理組合の合意形成が難しかったが、半損認定されたことにより、資金の問題がなくなり、スムーズに合意形成ができた。
 
【保険料】
地震保険料は、自動車損害賠償責任保険と同様に、基準料率制度を探用しています。保険会社各社は、損害保険料率算出機構が算出し、金融庁が臨可した地震保険料率を、そのまま適用する仕組みになっています。
地震保険創設時には地震の発生状況や頻度、活断層など当時のデータで算出した地震の発生確率によって4 7 都道府県を 4 つの段階に区分し、基準料率を定めていました。しかし、その後の地震の発生や活断層の調査結果などを考慮して、2006 年に改正が加えられました。また、加入促進のため、地震保険料の所得控除制度が2007年から導入されました。
宮城県の場合、頻繁に地震があるにもかかわらず地震保険料は比較的に割安です。
(H23. 10. 10 現在)
《非木造、保険金額 1, 000 万円、保険期間1年で 6, 500 円》 逆に保険料が高い都道府県は 、東京・神奈川・千葉   ・静岡・愛知・三重です。
《非木造、保険金額 1, 000 万円、保険期間1年で 16, 900 円》
宮城県のマンションで 1億円の地震保険に加入した場合、1年聞の保険料は 65, 000 円です。仮に40年に一度、宮城県沖地震が発生し、一部損が認定されたとすると、管理組合が40年で支払う保険料は 2. 600. 000 円で、受け取る保険金は 5. 000. 000 円になります。このように考えると、管理組合は地震保険に加入するのが当然であると言わざるを得ません。
ましてや、半損・全損にいたる可能性もある訳です。
 
【日本マンション学会の提言、地震保険に関する部分抜粋】
『東日本大震災によるマンション被害に対する緊急提言』
一般社団法人 日本マンション学会 H23. 6. 11
 
地震保険
マンションの管理組合が加入する共用部分及び専用部分に対する地震保険について、 戸建てとは異なるマンションの実情に即した被害認定基準を確立すべきである。
現在の基準では、建物の傾斜や 、主要構造部(土台・柱・震・屋根 ・構造壁等)の損傷の程度が基準となっており、共用部分では、非構造壁 ・扉 ・設備 CEV.. 受水槽、ポンプ等)、敷地等に大きな被害があっても、半損認定・一部損認定すら得ることが難しい。また、専有部分においては、各部屋の壁・床・天井・扉等に大きな被害があっても、半損認定・一部損認定すら認められないことがある。屋上貯水槽からの水損も対象外である。被災マンションでは 非構造部材や設備被害の占める比重が大きく、これらの補修のために多額の費用が必要であることへの配慮が必要であり、また専有部分の個別査定を徹底するため、地震保険法施行令 1条 1項 1号~3 号及び損保会社が採用するマンションの損害認定基準法を改正する必要がある。
 
また、損害認定は全損、半損、一部損の三段階に分かれているが、査定プロセスが閉鎖的であり、管理組合に対する透明性を確保すべきである。認定による保険金額の差異も著しく、よりきめ細かい制度設計も望まれる。

マンション共用部分の地震保険

一般社団法人 日本損害保険協会より

教えて!火災保険から「マンション共用部における地震保険の必要性について」

高倉 秀和

マンション共用部には地震保険は必要です。

東日本大震災のマンションではマンション共用部に地震保険の加入があったマンションは役に立ったという情報の一方では一部損認定(保険金額×5%)と半損認定(保険金額50%)には10倍の差があり、半損の認定まで行かないマンションは地震保険金だけでは修繕費をまかなえないマンションもあったという情報も散見しました。

これらの問題については現在の地震保険は

  • 全損(保険金額×100%)
  • 大半損(保険金額×60%)
  • 小半損(保険金額×30%)
  • 一部損(保険金額×5%)

この4段階に分けられていますので、マンションが被災しても地震保険金を活用し修復へ向けてある程度クリア出来るのではないかと存じます。

マンション管理組合様の保険証券を拝見することが多い保険のプロから見て気になるのは地震保険の付保率がまだまだ低いことです。地震保険に加入していない管理組合様に検討していただきたいのは地震保険への加入です。

大地震で建物や設備が深刻な被害を受けた時に、区分所有者は大きな負担を強いられる可能性があります。地震保険は加入をしていたとしても、補償内容が限定的なため地震保険は役には立つものの、マンション再建への金額には届かないことも考えられます。

しかし、地震保険の加入がなければマンション共用部に損害が発生しても火災保険からは何も出ません

地震保険は必要な保険ですので管理組合の皆さまはご検討くださればと思います。

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